セフィロスとアンジールは、タークスと共にジュノンで待機していた一般兵と救護班と落ち合い、そこから船に乗ってコスタ・デル・ソルへと向かう途中、ザックスからアンジールの携帯へ着信が入る。
それに気付いたアンジールは、ザックスが生きていたという実感を一番に受け、ほっと胸を撫で下ろした。一瞬、己の顔が緩んだのを自覚したアンジールは、気を引き締めてザックスの着信を取った。
「俺だ」
『アンジール! その任務待ってくれ!!』
「……お前は開口一番に何を言い出すんだ?」
耳元で大声で叫ばれたせいで思わず携帯を耳から離したアンジールは、引き締めた顔が一瞬で眉間に皺が寄った。柄にも無く瀕死だと聞いていたせいで油断していた。いつもの子犬全開だった。思わずため息がこぼれる。
傍で待機していたセフィロスとツォンにザックスの大声が聞こえた様だ。二人の目線がアンジールに集中する。
ザックスは此方が確認をする前に矢継ぎ早に事を伝えようとするが、アンジールがそれを制した。
「ここだと場所が悪い。移動するからちょっと待て」
目線とゼスチャーで場所を移動することを目の前の二人に伝えると、関係者以外立ち入り禁止の船室へと入る。そこにはシスネが待機していた。一度に全員戻ってきた事に少し驚いたのか、ツォンに何かあったのかと聞いている。
ツォンは扉の前で誰も来ないよう警戒しろとシスネを外に出した。それだけで察したシスネは了解し外に出て警備を行う。
「ああ、もういいぞ。任務を待てとはどういうことだ。説明しろ」
携帯をスピーカーフォンモードにし、他の二人にもザックスの声が聞こえるようにしたアンジールは、ザックスに説明を求める。こちらの任務ということならば、ドラゴンに関してだろう。
『ドラゴン倒すの待ってくれ!』
「人里近くにドラゴンが出没したと聞いたが、刻一刻と争う状況ではないのか?」
『ドラゴンはどちらかといえば魔晄炉の方で村側にはいない。それよりドラゴンは俺達より二ヶ月前に人と接触している。その時には村に下りてこなかった。今もその気配は無い。現時点で村人はドラゴンの事すら知らないんだ。村に下りてくる可能性は低いと判断して何も言って無いんだけど、その前に俺達が非難誘導できる状態じゃないっていうか。つかここ避難場所無いし』
「何故、村に下りてこないと言い切れる?」
『クラウドが村を守ってる。俺達、クラウドに助けてもらったんだ』
「ターゲットに助けてもらっただと?」
『あれ? その声ってばツォン?』
「ああ。ザックス、ターゲットから目を離すな」
『もうタークス来てんの!? えーーーー!!?』
「ああ、うるさいぞ。十分聞こえているから、もう少し声のトーンを下げろ馬鹿者」
ややうんざりとしたアンジールがザックスを叱る。いつも通り過ぎて、こいつは本当に瀕死だったのかと疑わずにはいられなかった。
心配損だと頭を抱えたアンジールに変わって、セフィロスがザックスに質問を浴びせた。
「その子供が村を守っているというのはどういう事だ」
『げ。おっさんまでいるのか。そういえばそうだっけ。あーえっと、クラウドが守っているっていうか、オーディーン?』
「本当にその子供が使役していると?」
『それは間違いない。というかオーディーンと意思疎通してる気がする。めっちゃクラウドの言うこと聞いてる。初め見たときすっげービビッた!!』
「召還獣と意思疎通が可能だと……?」
『つかクラウド、ドラゴンの孵化見守ってんの! ドラゴンに手を出したら、オーディーン嗾けてくると思う!!』
ザックスが言いたいことがようやくわかった。何も知らずにドラゴンの討伐を行えば、子供の機嫌を損ね、オーディーンと戦闘になる可能性があるという事だ。
三人は顔を見合わせた。ドラゴンの討伐ならばソルジャー1st二人もいればどうとでもなるが、オーディーンは別だ。過去の戦闘データが無い為、どれほどの強さか検討もつかない。
そもそも伝説が残るだけで、その能力も未知数だ。有名なのが一撃死攻撃をしてくるということ。だが敵として対峙し、次の瞬間に殺されてしまえば戦闘に関してのデータなど残るはずも無い。見聞きした伝承だけが残るのも頷ける。
能力が未知数の期待される人材を敵に回すことはしたくない。子供の機嫌は確かに重要視するものだった。
通常の、ただ能力に秀でただけの子供ならばそんな回りくどいことなどしない。だが、この子供の能力は聞くだけでもタークスの能力をはるかに凌駕しているだろう。
はっきり言ってタークスは醜聞が酷い。そもそも、それを専門としている部署だ。人攫いなど通常業務だ。だが相手に抵抗されれば、それをねじ伏せるだけの力は備わっていたからこそ出来る事だった。しかし、今回ばかりはそれが通用しないだろう。抵抗されてオーディーンを召還されたら一溜まりも無い。
ザックスから状況を聞けば聞くほど、クラウドという子供の存在が謎に包まれていた。
クラウドはどうやらドラゴンを見つけた後、オーディーンと共にドラゴンを見守っていたらしい。
村に下りて来ることを万一に考え、ニブル山を巡回していたようだ。そのお陰でザックス達はクラウドに発見してもらえ、一命を取り留めたといえる。だが、聞けば両親もいないという。周囲からも疎外されている8歳の子供が自発的にできることじゃない。
「ニブルヘイムの子供の目撃情報は二ヶ月前だった。間違いなく、その密猟者達だろう。強い魔法が使える小さな子供がいたという情報だったが、自分達の事を濁して子供に注意を逸らし、ドラゴンを狩る機会を伺っていた可能性がある」
「周辺にまだそいつらが潜伏している可能性は?」
「あるな。科研が欲しがるくらいだぞ」
『は? 科研? 何を欲しがるって?』
「あー、言ってなかったか。ドラゴンの卵だ。回収命令が出てる」
『なにーーー!!?』
直ぐ様アンジールがうるさいと叱責するが、ザックスはそれ所では無いようだ。この慌てっぷりは他にも何か隠している気がする。
訝しげに眉を寄せたアンジールはある事を思い出した。卵を見守っているという子供を差し置いてドラゴンを討伐し卵を回収したとすれば、子供の機嫌は悪くなるだろう。
「ザックス。お前はラザードに何を報告した?」
『へ? 何のこと?』
「惚けるな! いつもターゲットと必要以上に関わるなと言っているだろう!!」
『げっ! あ、やば!! 電池きれ……』
途端、都合よくブツっと途切れた通話に、アンジールの周辺の温度が一気に下がる。
それに気付いたセフィロスとツォンは、無言でアンジールの傍を一歩離れて非難した。
ザックスの子犬全開ぶりが書いてて楽しいです。
クラウドと出会う前に、ちょっと布石を置いておこうかと思いまして。もしかしたら順番を先にして、もう一回アンジール達の会話が入るかもしれません。ちょっとそこはまだ悩んでます。
短い話にするつもりだったのに、いつも通り設定盛りすぎて長くなるのはどうしたらいいんでしょうか。セフィロスとクラウド、まだ出会ってもいないよ……。
メールを頂いた方へのお返事は終えています。
まだ届いていない方は、ご一報いただけると幸いです。
ありがとうございました!
[4回]
PR