どさり、とオーディーンは片手に抱えていた四人分の荷物をベッドの脇に置く。
騎士のその体格は、大人三人分くらいありそうな程の大きさだった。兜の角が、既に天井に着きそうだ。こんなに身近でレアもレアなオーディーンを見ることなんて、縁があろうと正直見たくないだろう。
オーディーンの攻撃は一撃死だ。敵として、その姿を見た者は確実に次の瞬間には殺されている。
2ndの魔法力じゃ召還できるかも分からない。いや、その前に存在は認知されていても、オーディーンはあまりのレアぶりにおとぎ話化していたくらいなのだ。
ソルジャー四人は固まったままだが、その中でもザックスだけは、意識を失う前にも一度目にしていたので直ぐに持ち直した。
だが、どうしてもその騎士の存在に畏怖を覚えるのは仕方がない。
「あー……。ご家族の方、ですかね……?」
ただ流石と言うか、場違いな台詞を放つのだけは忘れなかった。
ザックスの言葉にオーディーンはちらりとその視線をこちらに向ける。
流石に目が合うとなると、硬直して全身に冷や汗をかき、口すら開けなくなった。
しかし、とたとたと走ってきたクラウドの存在が、オーディーンとソルジャー達の間にあった空気を変える。
「……ありがと」
荷物を運んだオーディーンを足元から見上げ、クラウドがお礼を言う。するとどうだろうか。
オーディーンはクラウドの頭をくしゃりとかき混ぜ撫でている。
そうして見ていると、ただの大きなお父さんとその子供だ。
ザックスはやはり、クラウドがオーディーンを召還しているのだろうと確信に近い勘が働いていた。
「あー……、クラウド、これ、召還獣だよな?」
「……しょうかん、じゅー?」
ザックスの投げかけた言葉にクラウドはきょとんとし、こてんと首を傾げた。
その様子に、ザックスは嫌な予感がした。
「マテリア、持ってないのか?」
「まてりあ……」
クラウドはオーディーンを召還獣として認識していないのかもしれない。いや、認識というより知識すら持ち合わせていない可能性がある。見るからに子供なのだから仕方がない。
そのことに気付いたのか、カンセルも問いかける。
「このくらいの紅い綺麗な玉、知らないか?」
「………」
カンセルがマテリアの大きさを親指と人差し指で円を作って形を示すと、クラウドはちらりとオーディーンを見上げた。
マテリアの存在を教えていいのかとオーディーンに聞いているのかと思ったら、オーディーンから殺気が迸った。
「ち、違う! ”そういう”んじゃないんだ!!」
これは確実に悪い意味で受け止められたと慌てて弁解するザックスに、他の三人も真っ青な顔をして必死に頷いている。
「オーディーン」
オーディーンの殺気に気付いたクラウドが、駄目だと諌めている。
次の瞬間、殺気が消えた。やはりクラウドの言うことを聞いている。そのことに気付いた四人は、驚愕しながらも目の前の現実に納得するしかなかった。
「やっぱり、クラウドが使役しているのか」
「召還獣の持続というか、戦闘以外でいうことを聞いてくれるなんて聞いたことないぞ……」
「ってか、オーディーンってほんとにいたのか……」
自分達を助けてくれたのはクラウドとオーディーンだということが、ザックス以外の面々も分かったようだった。
何か考え込んでいたザックスは、意を決してクラウドに聞いた。
「なあ、クラウド。ここ最近、オーディーンと一緒にニブル山に登ってたか? その時、誰かに会わなかったか?」
「山? 山にはいつもいるよ。……少し前に、おじちゃん達を助けたけど」
「……それか」
もしかしたら、そこからタークスに噂がいったのかもしれない。
子供の容姿が記載されていなかったのは、噂話の真相をソルジャー達に確かめさせたかったのだろうか?
「ザックス、やっぱりこの子……」
「タークスに確認しないと何とも言えないけど、多分クラウドで確実だと思う。オーディーンが目的なのか、クラウドのスカウトが目的か……」
「お兄ちゃん達、オーディーンに用があるの?」
「うーん、違うかな? 多分、俺達はクラウドを探してたんだと思うんだ」
「オレ……?」
知り合いでもない人が、何故自分を探しているのか分からないという顔をしていた。
その事に苦笑しながら、ザックスは説明する。
「多分、クラウドが前に助けたおっさんから、俺の会社に連絡がいって、クラウドにお礼がしたかったから探してた……とかかなぁ?」
最後は確実に違うだろうが、とりあえず当たり障りなく適当な事を言ってみた。
タークスは調査課だ。調査とスカウトが主な仕事ということは、タークスに所属している赤毛に聞いている。違うとしても事の経緯を報告書にまとめれば、確実にクラウドを欲しがるだろう。
「お礼……?」
「ん?」
ザックスの適当に言った言葉を復唱したクラウドの様子が、どうもおかしい。
何だか心外というか、機嫌悪そうに見える。どうしたというのだろうか。
「……お兄ちゃんはオレを探してたの? ドラゴンじゃないの?」
「えっ?」
「前に助けたおじちゃん達は、ドラゴンの卵を盗もうとしたよ。だから殺されかけたんだ」
その容姿に似つかわしくない言葉を放つ子供に、ザックスたちは目が点になる。
「お兄ちゃん達、ドラゴンに遭ってるよね。本当にオレを探してたの?」
先ほどまで穏やかに見えていたクラウドの目線が、獣の様に鋭くなり此方を睨んでいた。そしてクラウドの様子に連動するかのように、隣に控えていたオーディーンの殺気も復活する。
しかし、自分達はドラゴンの情報を教えられていなかった為に全滅しかけたのだ。
青くなりながらザックスは慌ててドラゴンがいた事など知らなかったと伝えるが、クラウドはそれだけでは信じていないようだった。
「俺達、最初はニブル山に迷い込んだ子供を捜す手伝いだと思ってたんだ。だからくまなく山を捜索してたんだよ。だからドラゴンがいるなんて全然知らずにいた。ドラゴンがいるって知ってたら、俺達よりもっと強い奴らが駆り出されるし!」
「まて、ドラゴンの卵を盗もうとしただと? その助けたおっさん共は密猟者か?」
「みつ、りょう?」
「動物とか沢山殺して、角とか毛皮とか卵を盗んで売る人達だよ。その日、生きる分とかの狩りじゃなくて、無駄に沢山殺して生態系を壊すんだ」
難しい言葉になると流石に分からないようだが、カンセルの説明に、なんとなく意味はわかったらしい。
人里近い山にドラゴンが住み着いていたなんて、村人達は知っていたのだろうか?
だったら何故最初に教えてくれなかったのだろう。その疑問が顔に出ていたのかはわからないが、クラウドがその謎を教えてくれる。
「……村のみんなは、ドラゴンが住み着いてるなんて知らない。ここ最近なんだ。あのドラゴンが来たの」
「そうなのか?」
「オレ、ニブル山よくいるから。なんでドラゴンがここに来たんだろうって思ったら、そのドラゴン傷だらけだったんだ。多分、どこからか逃げてきたんだと思う……」
「……」
「よく見たら、卵抱えてたんだ。だから、遠くから回復してあげて……」
「”回復してあげて”?」
クラウドの説明の中で、有り得ないことを聞いた気がすると、カンセルが思わず復唱してしまう。それに気付いたザックスが、そういえばクラウドがケアルガを使っていたのを思い出した。
「あ。クラウドは魔法も使えたな」
「えええええ!!?」
「召還獣扱える位だから魔法も使えるだろうけど……マジか……」
ショックだといわんばかりの他のメンバーは、凝視するようにクラウドを見てしまう。
それに居心地の悪さを感じたのか、クラウドは途端に黙ってしまった。
「まてお前ら、クラウドの話が途中だろ! そんなクラウドをまじまじ見てんじゃねーよ。減るだろ!」
「減るのか!?」
「あ、言葉が減るのか。ごめんな」
ザックスが諌めたと思ったらこれだ。上手い! なんていうエッサイの笑いにクラウドは吃驚したのか、自分達を睨んでいたのも忘れて、きょとんとした。
カンセルはそんな周囲に呆れたのか、ため息を吐いている。
どうも彼らのいつもの調子が戻ってきたらしい。そんな彼らに押されながら、クラウドはたどたどしくも説明を再開した。
「……おじちゃん達が殺されたら、村のみんなにドラゴンがいるのがバレて殺されるって思って助けたんだ……。でも、”みつりょうしゃ”だったのか……」
「クラウド、その考えは当たっているぞ。助けて間違いはなかった」
「……ほんと?」
「ドラゴンがいるって騒がれたら、俺らより強い奴が来てたからな。助けてくれたクラウドの事を言ったのは、多分密猟者だっていうのがバレたら逮捕されるからだろう。現に俺達はクラウドのことしか知らなかったし」
「むしろ、こんなに人里近い所にドラゴンは来ないんだよ。相当追い詰められてたな……。ドラゴンが傷だらけだったっていうし、そいつらドラゴンを追ってきたんじゃないか?」
「ああ。しかも卵を盗むとか、親が暴れて当然だろう。繁殖期間中は、絶対攻撃なんてしないぞ。しかも人里が近いなら尚更だ。被害が出たら甚大じゃない。だが、クラウドの存在を持ちかけて神羅に調査させた所をみると、密猟者達はあわよくばドラゴンを……と思ってたかもしれないな」
「……お兄ちゃん達は、ほんとにドラゴンの卵が欲しいんじゃないの?」
「違う違う。むしろ俺はクラウドと友達になりたいかなー」
いきなりのザックスの言葉に、えっ? と言葉を失うクラウドがいた。いや、言葉を失ったのは他の三人も一緒だった。
「お前、また……」
「ザッ君、ほんと欲望に忠実だね。いつものことだけど!」
「えー? だって、タークスがクラウド探してんだぜ? 絶対スカウト目的だろ? だったら俺達の後輩になるかもしんねーじゃん!」
「……お前はどこまで妄想が飛躍してんだ?」
「俺としては、後輩になる前に友達になりたいの! 後輩にならなくても友達になりたいの!! だって超すげーじゃん!! こんな召還獣呼べて魔法も凄くてさ!!」
「あー、その前にクラウドは俺らの命の恩人なんだぞ」
カンセルがザックスを嗜めると、分かってるよ! と噛み付く。
ザックスは師である1st達から、子犬とあだ名を付けられているということを知らない。
だが、そんなあだ名を付けられてしまうほどに人懐っこい子犬に見えてしまうのは仕方ないだろう。
今まさにクラウドに興味津々なザックスには、見えない尻尾がはち切れんばかり振られているように見えるからだ。
「クラウド、どうかな? 俺と友達になってくんねぇ? 嫌?」
ザックスはクラウドの目線に合わせてお願いするどころか、むしろもっとしゃがんで上目遣いは忘れない。そしてお願い! と手を合わせている。
そんなザックスに吃驚したのか、クラウドは真っ赤になっていた。
お? 好感触? と思ったら、
「と、ともだちなんて……きょうみないね!!」
真っ赤になってオーディーンの後ろに隠れるクラウドがいた。
そして振られたとわかったザックスが、ずーんと効果音がしそうなほどに落ち込み、他の三人が爆笑したのだった。
違う世界での校正中の息抜きにこっち書いてたら夢中になってしまってた……。
こっちの続きは、また長くなりそうなので、違う世界での方を更新してから書きます。
拍手有難うございます!!
リアルタイムで書いてるので凄く励まされてます……。;///;
[7回]
PR